情報発信

総合あん摩・マッサージ・指圧

SHARE

「手に職をつけたい方必見。あん摩マッサージ指圧師とは?専門家が徹底解説。」

SHARE

「手に職をつけたい方必見。あん摩マッサージ指圧師とは?専門家が徹底解説。」

あん摩・マッサージ・指圧は、それぞれに体系化された別々の手技療法です。これらの手技療法を使って治療する国家資格保有者を「あん摩マッサージ指圧師」と言います。今回は、それぞれの治療法の違い、資格の種類、資格取得後の働き方まで解説します。

1.あん摩マッサージ指圧師とは

 1.1 手技療法、あん摩、マッサージ、指圧について

2.あん摩マッサージ指圧師になるには

 2.1 あん摩マッサージ指圧師になるまでの流れ

 2.2 あん摩マッサージ指圧師になるための国家試験について

3.あん摩マッサージ指圧師が活躍できる場所

 3.1 他職種との違い

4.あん摩マッサージ指圧師の1日のスケジュール

5.あん摩マッサージ指圧師の平均給料

6.あん摩マッサージ指圧師の将来性と今後のキャリアプラン

1.あん摩マッサージ指圧師とは

1.1 手技療法、あん摩、マッサージ、指圧について

①手技療法とは

文字通り、道具を使わずに患者さんの身体に触れることで、様々な症状を治療することを指します。「手当て」という言葉がある通り、ヒトは身体のどこかに不調や痛みがある時に自然とその場所に手を伸ばし、触れます。皆さんも触れることで症状が緩和する経験をしたことがあるのではないでしょうか?こうした治療の原点とも言える「手当て」を様々な医学的知識を踏まえ体系化(システム化)したものが手技療法です。

②あん摩とは

あん摩は、日本において最も古い手技療法の1つです。古代中国から導引按蹻(今でいう気功、体操、呼吸法、あん摩を合わせたもの)と言う形で日本に入ってきました。日本では宮内省典薬寮という朝廷の1分科の中に按摩師として国に認められた職業でした。治療のベースには東洋医学の考え方があり、経絡や経穴(ツボ)による治療を行います。原則として衣服の上から遠心性(身体の中心から末端に向けること)に行う手技が多くなっています。

③マッサージとは

マッサージは古代ヨーロッパ(古代ギリシア、古代ローマ)で行われていた手技療法で、皮膚の上に直接触れて滑剤(オイルなど)を用いて行うものです。日本には、明治期にフランスなどで発展したものが伝わり、日本古来のあん摩と融合した形で独自に発展していきました。マッサージは、主に西洋医学の解剖学や生理学をベースにした治療方法です。

④指圧とは

指圧は日本古来のあん摩や活法、明治期に日本に入ってきたマッサージ、アメリカのカイロプラクティックなどの整体術を組み合わせて体系化された手技療法です。主な手技は押圧手技(圧迫法)と運動操作です。母指による1点圧による治療が多く用いられています。

2.あん摩マッサージ指圧師になるには

2.1 あん摩マッサージ指圧師になるまでの流れ

①国家試験までの流れ

あん摩マッサージ指圧師国家試験の受験資格を得るためには、高校卒業程度の学歴が必要です。その後、文部科学大臣または厚生労働大臣の指定する学校または養成施設で3年以上勉強し、単位修得の後に受験資格を得ることができます。受験資格を得たら、東洋療法研修試験財団が実施する「あん摩マッサージ指圧師」の国家試験を受験することができます。

②学校または養成施設について

・専門学校

  3年間の修業期間で必要な単位を修得することで卒業できます。高校卒業または大学卒業してすぐの方や社会人経験者、定年退職後の方など幅広い年齢層の方が入学されます。クラス内において入学した背景が違う方同士が交流できるのが大きな特徴です。一般教養科目が少なく、あん摩マッサージ指圧師の資格取得に必要な西洋医学や東洋医学の専門科目を集中的に学ぶことができます。

・大学

 4年間の修業期間で必要な単位を修得することで卒業できます。学生の割合としては高校卒業してすぐの方が多いという特徴があります。年齢が近い方同士で和気あいあいとした特徴があります。専門学校より一般教養科目が多くなります。ただし、日本にあるあん摩マッサージ指圧師の資格取得が出来る大学は視力に問題のある方のみとなっています。

2.2 あん摩マッサージ指圧師になるための国家試験について

①受験資格(東洋療法研修試験財団HPより)

学校教育法第90条第1項の規定により大学に入学することのできる者で、3年以上、文部科学大臣の認定した学校又は厚生労働大臣の認定した養成施設(いわゆる専門学校)で必要な知識及び技能を修得した者。

ただし、著しい視覚障害者については、学校教育法第57条の規定により高等学校に入学することのできる者で、あん摩マッサージ指圧師は3年以上、はり師及びきゅう師は5年以上、上記の学校又は養成施設で必要な知識及び技能を修得した者。

②実施日

年1回(2月の最終土曜日)

③試験地

晴眼者(視力に問題のない方):宮城県、東京都、愛知県、大阪府、香川県、鹿児島県

視覚障害者:各都道府県

④試験科目

医療概論(医学史を除く)、衛生学・公衆衛生学、関係法規、解剖学、生理学、病理学概論、臨床医学総論、臨床医学各論、リハビリテーション医学、東洋医学概論・経絡経穴概論、あん摩マッサージ指圧理論及び東洋医学臨床論

⑤試験方法

客観式四肢択一による筆記試験(マークシートに記入、実技試験なし)。

⑥問題数

午前・午後各80問 合計160問(正答率が6割以上の96点以上で合格です)

⑦受験手数料

19,500円

⑧合格率(厚生労働省HPより)

第30回:84.7%(受験者1,278名、合格者1,082名)

第31回:88.6%(受験者1,296名、合格者1,148名)

第32回:84.0%(受験者1,109名、合格者932名)

⑨免許証の交付

国家試験に合格すると合格証書が送付されます。その後、登録申請し名簿に登録することにより免許証が交付されます。

3.あん摩マッサージ指圧師が活躍できる場所

医療分野

・病院、クリニックなど

リハビリテーションのスタッフの一員として、医者、看護師、他の医療職とチームとなり患者の機能回復を図ります。

・マッサージ治療院、鍼灸マッサージ治療院、接骨院など

様々な疾患に対して、あん摩マッサージ指圧の適応を見極め、症状の軽減や回復を助ける役割を担います。治療院内だけでなく、訪問してケアにあたることもあります。

福祉・介護分野

・在宅ケア

通院などが困難な方に対し、ご自宅に訪問し日常生活動作や関節の可動域の回復の手助けを行います。介護保険制度の枠組みで多職種と連携を行っていくことが多くなっています。

・高齢者福祉施設

特別養護老人ホームや短期入所介護施設、デイサービスなどで機能回復を目的とした訓練や施術を行い、高齢者の方が健康的で自立した生活が出来るようにケアしていきます。

スポーツ分野

・スポーツトレーナー、スポーツクラブなど

アマチュアチームやプロチームに帯同し、選手のケアを行います。競技前のコンディショニングや競技中のサポート、競技後のケアなど多岐にわたります。チームに帯同せず、選手個人に付きトレーナー活動を行うこともあります。マッサージ技術だけでなく、テーピングやトレーニングについての知識が求められます。スポーツクラブでは、トレーニング方法などの補助を行います。

美容分野

・エステなど

マッサージの技術や知識に加え、美容に関する知識を用いて、肌の悩みなどのケアを行います。

その他

・個人開業

あん摩マッサージ指圧という名称を用いて開業できるのは、あん摩マッサージ指圧師だけです。地域の保健所に施術所開設を申請することで開業が出来ます。また、施術所を構えず出張専門で患者の自宅でケアを行うことも出来ます。

・海外渡航

該当する地域・国の法律に従い資格を得られると施術が出来ます。

3.1 他職種との違い

①民間資格

整体師、カイロプラクター、リフレクソロジスト、エステティシャンなど手技療法に関わる資格は数多ありますが、どれもが民間資格と言われるものです。国が認めたものではなく、各関連団体が独自で発行しているものがほとんどです。

②民間資格と国家資格の違い、メリット

民間資格と国家資格の違いは、国が公的なものとして認めているかどうかです。

 

厚生労働省では

・国家資格とは、一般に、国の法律に基づいて、各種分野における個人の能力、知識が判定され、特定の職 業に従事すると証明されるものとされる。

・国民の生命、健康、財産などを守ることにつながる業務について、国が責任を持って一定の基準を定め、一定の水準以上の知 識・技術を修得していることを国又は都道府県が確認する必要があるもの。

・有資格者以外の者に対して、当該資格の名称を用いて業務を行うことを禁ずることにより、事業主や利用者等にとって質の高い 者の選択が容易となる。

・有資格者以外はその名称を用いて業務を行うことが認められていない資格。

とされています。つまり、国が定めた基準をクリアした者が国家資格保有者と言えます。

4.あん摩マッサージ指圧師の1日のスケジュール

あん摩マッサージ指圧師として勤務する場合は、治療院により違いがあるものの概ね週5日(週休2日)、

 1日8時間勤務の所が多いようです。

 

 9時前:出勤、院内ミーティング

 9時頃~:施術開始

 12時頃:昼休憩

 14時頃:施術開始

 18時頃:勤務終了、ミーティング

 その他、訪問で施術を行っている治療院の場合は、勤務時間内で患者のご自宅を訪問するケースもあるようです。

5.あん摩マッサージ指圧師の平均給料(職業情報提供サイトより)

平均求人賃金:25.7万円

平均年収:443.3万円

ボーナスは、各治療院により違いがあるようです。

初任給は、概ね20万円ほどが多くなっています。

6.あん摩マッサージ指圧師の今後のニーズ、キャリアプラン

マッサージ施術のニーズの高まり

あん摩マッサージ指圧師が関わる範囲は医療、看護、介護、スポーツ、美容など多岐にわたります。病院で病気と診断されなくとも不定愁訴(明確な異常が見つからないが症状があるもの)で日常生活に支障が出ている方も多くいます。そんな患者に対し、あん摩マッサージ指圧師はリラクゼーションが求められる場面ではリラクゼーションを、症状の緩和を求められれば必要な手技を行うことが出来ます。1つの症状だけでなく、1人で複数の症状があり困っている方ほど全身を見て、患者1人1人の体質や体調に合わせた施術が求められています。また、高齢者が増えている現状では、健康的な生活を自立して行うことが出来るサポートが必要とされています。こういった背景からもあん摩マッサージ指圧師は今後も求められる機会が多いと考えられます。

また、以前はあん摩マッサージ指圧師は、個人開業をすることが既定路線と考えられていましたが、今は個人開業だけでなく、グループ系治療院で腕を磨きキャリアを築いている方、訪問事業において業務委託の形で患者に対応する方、病院内の施設で働く方も多くなっています。あん摩マッサージ指圧師は、機能訓練指導員として認められているので、福祉施設において高齢者への機能回復のためのケアが今後も求められています。

吉田和大

東海大学体育学部社会体育学科卒業後、東京医療福祉専門学校へ進学(はり・きゅう・あん摩マッサージ指圧科)。鍼灸師(はり師・きゅう師)、あん摩マッサージ指圧師免許を取得する。

東京医療福祉専門学校卒業後に、治療室アクアに就職し鍼灸あマ指臨床に従事した後、東京医療福祉専門学校教員養成科へ進学。2011年から晴雨堂はり灸マッサージにて臨床に携わる。

現在は、東京医療福祉専門学校の東洋医療学科(はりきゅうあん摩マッサージ指圧科)専任教員として

在籍。

【保有免許・保有資格】

鍼灸師(はり師・きゅう師)、あん摩マッサージ指圧師免許

鍼灸マッサージ教員資格